反訳とは、反訳書とは
反訳(はんやく)とは、録音された会話を文字に起こすことです。訴訟で録音を証拠として出すとき、その内容を書き起こした書面を「反訳書」と呼びます。裁判官も相手方も、何時間もの録音を聞く前に、まず反訳書を読んで内容をつかみます。
民事訴訟規則第149条は、録音テープ等の証拠調べを申し出た当事者は、裁判所または相手方の求めがあるときは、録音の内容を説明した書面(録音を反訳した書面を含む)を提出しなければならないと定めています。この書面は相手方に直送し、相手方は説明の内容に意見があれば、意見を書いた書面を出します。実務では、求めを待たずに録音と反訳書をあわせて出すことが多くあります。
反訳した書面を書証として出した場合、相手方が求めれば、元の録音データを提供するか、録音の複製を渡さなければなりません(同規則第144条)。反訳書は、元の音声と突き合わせられることを前提に作ります。
反訳書に決まった書式はない
反訳書に公式の様式はありません。ただ、裁判所に出すほかの書面にそろえて、次のように作るのが一般的です。
- A4判・横書き。準備書面やほかの証拠と同じ体裁にそろえます。
- 素起こし(逐語)。言いよどみ、繰り返し、相づちも含め、聞こえたとおりに書きます。要約や言い換えはしません。
- 表題は「反訳書」。どの録音の、どの証拠の反訳かを冒頭に示します。
- ページ番号を振り、長いものは行番号も付けます。書面や尋問で「何頁何行」と指せるようになります。
発言の言い回しやニュアンスそのものが争点になることがあるため、読みやすく整えた版を添える場合でも、証拠として出す本体は素起こしにしておくのが無難です。
冒頭に書く録音の情報
民事訴訟規則第148条により、録音の証拠調べを申し出るときは、証拠説明書で録音の対象と、その日時・場所を明らかにします。裁判所によっては、実務上、録音者の記載も求めています。反訳書の冒頭にも同じ情報を書いておくと、照合がしやすくなります。
- 録音日時(例:2026年4月10日 午後2時05分から)
- 録音場所(例:被告事務所の会議室)
- 話者(例:原告本人=X、被告代表者=Y)と録音者
- 録音時間(例:1時間12分34秒)
- ファイル名と形式(例:20260410_meeting.m4a)
どの部分を反訳したかも書きます。全部か、何分何秒から何分何秒までか。一部だけの反訳なら、その範囲を必ず示します。
話者の表記、聴取不能、タイムコード
本文は発言ごとに改行し、行頭に話者を付けます。表記のしかたは冒頭で定義しておきます。
- 話者の略称:X、Y、あるいは「原告」「被告」など。最初に「X=原告本人」のように対応を示します。
- 聴取不能:聞き取れない箇所は推測で埋めず、「(聴取不能)」と書きます。おおよその長さを添える書き方もあります。
- 不明瞭な語:自信のない語は「(○○?)」のように印を付け、確かな箇所と区別します。
- タイムコード:発言の頭に録音内の時刻(00:12:34など)を付けると、裁判所も相手方も該当箇所をすぐに再生できます。
- 言葉以外の音:(笑い)(沈黙 約10秒)(ドアの開閉音)などは括弧書きにします。
証拠説明書と甲号証の番号
原告が出す証拠は甲号証、被告が出す証拠は乙号証として番号を振ります。証拠説明書には、民事訴訟規則第137条により標目・作成者・立証趣旨を書き、録音については第148条により対象・日時・場所も書きます。
録音と反訳書の番号の付け方は、事件や裁判所の運用によって異なります。たとえば録音を甲第5号証の1、その反訳書を甲第5号証の2とするように枝番で対応させ、どの反訳がどの録音のものか一目でわかるようにします。迷ったら担当の書記官に確認するのが確実です。
相手に告げずに録った録音でも、民事訴訟ではそれだけで証拠能力が否定されるわけではないとされますが、録り方によっては否定された裁判例もあります。このページは一般的な情報で、法的助言ではありません。
Scrivenで反訳書の下書きを作る
反訳でいちばん時間がかかるのは、最初の書き起こしです。Scrivenは録音から、発言ごとに分かれ、話者と時刻の付いた下書きを作ります。下書きはあくまで下書きです。音声と照らして直し、確定するのは人です。
- 録音をこのページの上にドロップします。話者の人数がわかっていれば指定できます。
- エディタで行をクリックすると、その箇所が再生されます。Spaceで再生・停止、JとLで3秒戻る・進む。
- 語を直し、話者名を「X」「Y」などに変えます。数字キー1〜9で発言の話者を付け替え、⌘Bで発言を分け、⌘Mでつなぎます。
- 自信のない語には印が付きます。聞き直して直すか、「(聴取不能)」と書き換えます。⌘↵で行を確認済みにして次へ進みます。
- PDFまたはWordで書き出します。ページ番号・行番号とタイムスタンプが付きます。表題や冒頭の録音情報はWordで書き加えます。
修正のたびに確認者の名前が残り、最後に確認者が、すべての箇所を確認したことを証明し、その版が確定(ロック)されます。これはチーム内の確認の記録です。Scrivenは反訳の正確さや証拠能力を保証するものではありません。提出前の最終確認は、提出する側で行ってください。
書き出しには無料アカウントが必要です。相手方や第三者に見せる前に、氏名などを匿名化することもできます。
自分で作るか、業者に頼むか
反訳は業者に頼むこともできます。料金は録音の長さや音質、納期で変わり、見積もりが必要なことが多いです。自分で作るなら、ゼロから打ち込むより、下書きを音声と照らして直すほうが手間は少なく済みます。
Scrivenの料金:Freeは毎月60分のクラウド文字起こしで、カードは不要です。Localは1ユーザー月額29ドルで、デスクトップアプリでの端末上の文字起こしが無制限。Proは1ユーザー月額49ドルで、1席あたり600分のクラウド文字起こしがチーム全体で共有されます。
録音を事務所のパソコンの外に出したくない場合は、デスクトップアプリ(Windows・macOS・Linux)がオフラインで文字起こしと話者分離を行います。クラウドを使う場合は、米国、EU(ドイツ)、シンガポール、日本から処理する地域を選べます。
反訳書についてよくある質問
反訳書に決まった書式はありますか?
いいえ、公式の様式はありません。A4・横書き・素起こしで、冒頭に録音の日時、場所、話者、録音時間、ファイル名を書くのが一般的です。
反訳書は必ず出さなければなりませんか?
民事訴訟規則第149条は、裁判所または相手方の求めがあるときに、録音の内容を説明した書面(反訳書を含む)を出すと定めています。実務では録音とあわせて出すことが多くあります。
本人訴訟でも、反訳書を自分で作れますか?
作れます。決まった書式はないので、このページの項目に沿って作り、音声と照らして確認してください。不安があれば弁護士に相談してください。
聞き取れない部分はどう書きますか?
推測で埋めずに「(聴取不能)」と書き、タイムコードを添えます。Scrivenでは自信のない語に印が付くので、聞き直す箇所を見落としにくくなります。
アプリで作った反訳書は、そのまま証拠になりますか?
Scrivenが作るのは下書きです。人が音声と照らして直し、確認したうえで、提出する側が証拠として出します。Scrivenは正確さや証拠能力を保証しません。
録音を外部に送らずに反訳できますか?
できます。デスクトップアプリはパソコン上で文字起こしと話者分離を行い、録音をアップロードしません。
長い録音でも使えますか?
このページでは最初の15分間を無料で試せます。無料アカウントは毎月60分、Localプランならデスクトップアプリで長さの制限なく文字起こしできます。